#WS07 2024年度日本建築学会・学生と地域の連携によるシャレットワークショップー伊勢崎のまちづくりデザインを考えるー
2024年8月21日〜8月25日、一般社団法人日本建築学会住まい・まちづくり支援建築会議(教育普及部会)主催のもと、2024年度学生と地域との連携によるシャレットワークショップ(以下、シャレットワークショップ)が群馬県伊勢崎市で開催されました。
日本大学含む10校の大学・工業高専、18名の建築・都市系を学ぶ学生が全国から集まり、日本大学からはM1の中村佳乃さんと橋本瑛さん、B4の坂本愛佳さんが参加しました。また学生に対して、全国各地から大学教授をはじめ専門家など、建築・都市計画系の最前線で活躍する15名の講師が集まり、非常に豪華な体制で行われました。
講師陣
野原卓(横浜国立大学)、北原啓司(弘前大学)、阿部俊彦(立命館大学)、泉山塁威(日本大学)、辛島一樹(前橋工科大学)、黒瀬武史(九州大学)、小林剛士(山口大学)、小林正美(明治大学)、宋俊煥(山口大学)、高橋潤(アルキメディア設計研究所)、野澤康(工学院大学)、野嶋慎二(福井大学)、三輪律江(横浜市立大学)、藪谷祐介(富山大学)
2022年度のシャレットワークショップ参加の様子はこちら
2023年度のシャレットワークショップ参加の様子はこちら
対象地区:群馬県伊勢崎市
群馬県伊勢崎市伊勢崎地区は、養蚕に恵まれる地勢を活かし、太織まちとして発展しました。江戸時代には繭や生糸の生産が盛んになり、群馬県の前橋と栃木県の小山をつなぐJR両毛線が開通しました。これにより、銘仙や生糸を買うために、東京や関西方面から伊勢崎に商人が集まり、それらによって形成された舟運や水路は今もなお残っています。しかし、近年ではバイパス道路の整備等に伴い、幹線道路沿いへ大規模小売店や飲食店などの商業集積が移行し、これに地元商工業者の高齢化に伴う廃業や人口減少も相まって、まちなかの空洞化は進んでいます。一方で、まちなかでは様々な事業や計画の立案が実施されています。駅から南の繁華街へ延びるシンボルロードの形成、新保健センター・子育て世代包括支援センターの整備や駅前広場の活用が実施され、市民のまちなかへの吸引機能、施設利用者のまちなかへの回遊の促進が期待されています。
シャレットワークショップの詳細
1日目(8月21日)は、伊勢崎市職員の方から伊勢崎の歴史及びまちづくりについてのレクチャーを受けました。その後は、市職員の方に案内をしていただきまちあるきを行いました。まちあるき後は4グループに分かれ、まちの印象や評価・改善ポイントをまとめ、全体へ共有しました。
2日目(8月22日)からは以下の4つのテーマに分かれ、グループワークを行いました。
・全体(広瀬川と水路)
・駅周辺①(シンボルロード)
・駅周辺②(駅南の交流機能創)
・本町通り+リノベーション
3日目(8月23日)には地域の方々へ向けて提案の方向性を発表する中間発表を行いました。地域住民の方から、質問や貴重なご意見をいただきました。これらをもとに各班、最終発表会にに向けて、グループのメンバーや講師の方々と議論を重ねました。
4日目(8月24日)は、各班が提案内容を詰めていくことに加え、プレゼンテーションボードや模型の作成を行い、アウトプット作業に励みました。
5日目(8月25日)は、伊勢崎市長の臂泰雄氏や市議会議員の方々と地域住民の方々を招き、最終発表を行いました。
以下、都市計画研究室(泉山ゼミ)の学生が関わった2つのグループの提案を紹介します。
全体(広瀬川と水路):未来につなげ!伊勢崎っ子 伊勢崎らしさを創出し、地域愛を育む
提案者:坂本愛佳(日本大学)・中村瑞季(芝浦工業大学)・玉置涉真(山口大学)・守山真司(工学院大学)
伊勢崎市の人口は減少し続けており、特に伊勢崎駅周辺では今後の著しい減少が予想されることから、20年以上先の伊勢崎を担える人材の確保が求められています。そこで、私たちはこれからの伊勢崎を担う“若い世代”に着目しました。衰退した中心市街地に若い世代の人たちが集まるような”伊勢崎”らしさ”を見える化していくことを軸に提案を行いました。
伊勢崎らしさを創出する資源として、かつては中心市街地を形成していた「舟運」と「水路」に着目しました。隠れてしまった伊勢崎“らしさ“を見える化するために、伊勢崎の魅力を発信する“しかけ“を2つ設置しました。
しかけ❶「舟運と商いでしかける城下町の賑わい復活エリア」と題して提案を行いました。伊勢崎駅前をスタート地点として、水路と川を近くに感じながら、伊勢崎市の名産の販売、川下りをして舟運の復活をリます。
しかけ❷「水路でしかける水端広場・水遊びエリア」と題して提案を行いました。伊勢崎の生活の基盤であった水路を一番街に復活させることで、かつて水路で行われていた交流の場を若者に向けて創造する案としました。
本町通り+リノベーション:つないで、見つける
提案者:中村 佳乃(日本大学)・橋本 瑛(日本大学)・池田 士恩(前橋工科大学)・齋藤 睦己(芝浦工業大学)・河内 遼一(立命館大学)・阿久津 結伊(小山工業高専)
中心市街地のメインストリートである本町通りに位置する「SOAビル」と、かつては本町通りと同様にメインストリートであった西町通りに位置する「相川考古館」の北側にある「中沢肉店」を中心とした敷地に対しての提案を行いました。
SOAビルでは、建物を南北に抜くという提案を行いました。SOAビルのある本町通りは、伊勢崎市のメインストリートであり、東西を結ぶ軸としての要素が強いという特徴があります。しかし、南北を断絶する通りであり、その断絶感が歩きやすさに影響を与えていると考えました。そこで、本町通りの中でも、伊勢崎駅から南に伸びるシンボルロードとの交差点に面し、好立地な場所のSOAビルにおいて南北の軸を新たに作ることを提案しました。
中沢肉店での提案では、新伊勢崎駅の駅から一方通行で真っ直ぐ進んだT字路の突き当たりにある建物で、町家の特徴のある建物です。しかし、ファサードは看板建築として、町家のらしさのあるファサードを隠しており、状態もあまり良い状態ではありませんでした。そこで、私たちは看板を外し、町家の特徴を露出させることや、町家の特徴の一つである土間を中庭まで真っ直ぐに貫き、建物をオープンにすることなどを提案しました。
地域との交流
本シャレットでは、発表会など地元の方と交流する機会が多いことも魅力のひとつです。特に初日と最終日の夜に行われた懇親会では伊勢崎愛に溢れる地元のみなさんと過ごすことで、伊勢崎の新たな魅力を発見できる場となりました。
他大学の学生や講師陣との交流
シャレットの特徴は、普段は交流することできない、全国各地の学生が日本各地から集まることです。バックグラウンドの異なる学生が集まることで、新たな知見を得ることができ、活発な議論が行われます。時には意見がぶつかることもありますが、参加している学生全員が「このまちを自分たちの手で魅力的にしたい」という想いを持っているからこそ、最終的に個性的で魅力ある提案ができたと思います。
また、学生だけでなく多くの講師の方々からご意見をいただけるのもシャレットの魅力の1つです。毎日行われるエスキスでは、多様な分野の視点からご意見をいただき、各班の思考を深める機会を設けていただきました。結果として、最終提案では自分たちの案に厚みを持たすことができました。
以上のように、他大学の学生や講師陣との交流により、成長することができたシャレットでした。
M1:橋本瑛・中村佳乃
B4:坂本愛佳