MAGAZINE
2025年度研究室活動について泉山先生にインタビュー!!

はじめに
4月になり、新体制での研究室活動がスタートしました!
2025年度4月号マガジンでは、都市計画研究室(泉山ゼミ)准教授の泉山塁威先生に2025年度の研究室活動についてインタビューを行いました。
今回のインタビューでは、研究室創設から5年目という節目の年である、2025年度の活動について話を伺いました!
1.研究室のゼミマインドについて
Q:4月に入り、2025年度の研究室活動が始まりましたが、改めて都市計画研究室(泉山ゼミ)のゼミマインドについて教えてください。
A:ゼミマインドは2021年に作成したものであるため、アップデートできれば良いと考えています。現在掲げている下記の①~⑥以外にも、新しく加えるべきものがあるのではないかと考えています。それはまだ言葉としてまとまっていないため、5周年という節目でみんなで考えたいと思っています。アップデートする理由は、ゼミマインドを作成した時に比べて、大学院生が大幅に増えたりと、研究室内の状況が色々と変わってきているためです。

(作成者:柚﨑廉太朗)
♢ゼミマインドの現状について
①自ら主体的に、積極的に研究活動に参加する
参加しているイメージはありますが、もう少し主体的に頑張ってほしいです。言われたからやるという印象が強く、研究室活動において、自発的な提案があると良いと思います。
②自ら考え、他者と議論し、自らの疑問を解消する
これは結構足りてないというイメージです。ユニット※は存在しますが、もっとユニットを越えた議論があると良いと思います。2024年度の卒論では、ユニットをまたぐような議論があったのが良かったですが、全体的にみると、他者との議論はまだまだ足りていないので、2025年度もそのような議論が増えることに期待しています。
個々には達成できているかもしれませんが、本当に疑問を解消しているのか?、外から見て視覚化されていないところに課題があると思います。
※ユニット:M2からB4まで縦の学年を超えて、共同で研究を行う。主に、同じ研究テーマの柱を持つM2・M1・B4の各学年から構成される。
③常に知的好奇心を持ち最先端の情報を吸収し、問題意識を深める
都市的雑談をする上で、自分で積極的に情報をインプットすることは重要です。しかし、こちらが流している情報は、あまり受け取ってもらえていない印象があり、それ以外の情報のインプットについても課題があると思います。例えば、ゴハンに行くときなど雑談をする機会があるときに、研究室のことだけでなく、都市的雑談ができるように、自ら積極的に情報を吸収してほしいです。
④都市の課題は現場にある。研究室プロジェクトに参加し、経験、実践知、コミュニケーション、マネジメントを養う
これはみんなできていると思います。ただ、タスク管理やプロジェクトマネジメントが課題だと感じています。やり方は本に書いてありますので、自分でインプットして、プロジェクトで実践することが大切です。まとめると、参加はしているけれども、準備(インプット)の部分がまだ足りてないという印象です。また、自分たちが行っている活動をもっと外に発信・共有できると良いと思います。
⑤学会に積極的に参加、発表、論文投稿をし、学外へのアウトプットとディスカッションを積極的に行う
論文投稿については、当たり前のようにやるという習慣が定着しています。しかし、2024年度の学会発表会では、他の研究に対して十分な関心を持って話を聞くことができていない場面も見られました。もう少し広い視野を持ちながら、活動して欲しいと思います。アウトプットは積極的に行っていますが、ディスカッションの部分が課題です。
⑥都市系は高度かつ広範な専門分野であり、より専門性を高める大学院進学を推奨
これはみんなできているという印象です。実際に多くのゼミ生が大学院に進学しています。
♢現在設定されている6個以外について
上記の①〜⑥以外の部分で足りないことは、やはり「中長期的な視点で物事を考える」ということだと思います。今のゼミ生は、非常に短期的な視点で、目の前のことに精一杯になっている印象があります。これは都市計画的な話でもいえることで、他の大学の先生ともよく話しますが、最近の学生は社会実験とか、すぐにできることを提案しがちだと思います。それはとても大事なことではあるのですが、短期的な視点のみでは大きくまちは変わりません。そのため、研究室活動という意味でも都市計画という意味でも、「中長期的な視点で物事を考える」ということは重要です。
泉山先生:(ゼミマインドの6個以外に)他に何かありますか?
柚﨑:①の自ら主体的にという部分と重なるかもしれませんが、泉山ゼミでは卒業研究・プロジェクト・係など、ほとんどがグループ活動で行われていることから、「グループの中で自分の役割をみつける力」を養うと良いのではないでしょうか。都市計画という仕事で考えたときにも、他の人と協力して作業を行うことになると思います。自分の役割をみつけることで、泉山先生がよくおっしゃる「自分ゴトとして認識する」にも繋がるのではないでしょうか。
泉山先生:④に重なってる部分もある気もしますが、たしかにコミュニケーション能力をもう少し養って欲しいとは感じますね。ちなみに、就活でもよく求められますけど、コミュニケーション能力とは何だと思いますか?
柚﨑:単に人と喋るということにはとどまらず、喋ることで自分が解決したい事柄を、人の意見を貰って解決したりだとか、相手の考えを聞いて、自分の意見を述べるというのがコミュニケーション能力なのかと思います。
及川:都市的雑談の話にも近いですが、同じ話題を話せたり、共通の話題を作れたりすることが重要であると考えます。
泉山先生:コミュニケーションでは自分なりに仮説を持っていることが重要だと考えます。仮説と聞くと、研究っぽくなってしまうかもしれませんが、コミュニケーションの中で、自分がこの人と話をした時に、こういうような返事を貰いたいとか、こういうような事を話しておきたいとか、考えておくことが大切なのではないかと思います。良い質問ですねとか言ったりしますが、そういう質問は仮説や意図がしっかりしているものだと思います。
2.2025年度の研究室活動について
2-1.研究について
先日、研究グループとユニットが決定しましたが、研究の柱を軸に決定したというところは2025年度のユニットの特徴だと考えています。研究テーマのGoサインを出していく上で、5本の柱はとても重要になってくると思います。この研究の柱だからこそ、この研究テーマという関係が大事だと考えます。したがって、なんとなくこの柱とかではなく、その柱となる必然性が欲しいです。
また、客員研究員がいなくなり、研究生が2人いるということも、2025年度の特徴だと捉えています。研究生という立場が研究室活動のなかでどのような働きをしてくれるのかにも期待しています。
2-2.プロジェクトについて
年度が変わり、学生も入れ替わってくるなかで、なぜプロジェクトに取り組んでいるのかという部分が曖昧になってきているような気がします。実践の経験ができるというのはもちろんですが、研究と実践を両輪でまわしていくということが大切です。実際に2024年度のゼミ生でも、プロジェクトの経験が研究テーマの問題意識に繋がるということがありました。やはり、現場を知ることで、自分たちの研究テーマの課題がどこにあるのかを知ることができます。プロジェクト自体も実は研究活動です。実際にプロジェクトの成果を学会に出していることもそうですが、何か新しい知見を実践の中から得ることが大切です。そういった視点をもう少し持ってほしいと考えています。
♢秋葉原ウォーカブル
継続的に取り組んでいるプロジェクトとして、秋葉原ウォーカブルがありますが、このプロジェクトの対象地は大学から非常に近く、個性的なまちです。ウォーカブルシティ・パブリックスペース活用・エリアマネジメントというキーワードは、うちの研究室が取り組んでいる要素を多く持っていると思います。また、25〜30年というスパンでまちをどのように変えていくかということを考える必要があると思います。
♢中野南口プロジェクト
中野南口もこれから入ってきそうなプロジェクトですが、僕自身は7〜8年関わってきているまちです。中野サンプラザの建て替えがどのようになるのか分からないなかで、民間や行政だけでなく、地元が動こうとしています。そのような状態で、どうフォローアップしていくのかが、大学の役割だと考えています。開発とパブリックスペースの活用が進行しており、やがてそれらをエリアマネジメントにするという段階にあると考えます。中野南口は物事が色々と動いている印象です。中野サンプラザ跡地の開発は今止まっていますが、それ以外の公共関係は進んでいます。サンプラザ跡地の開発が完成するときに、まち全体としてどうなっているかを考えていきたいと思っています。これもやはり、中長期的な視点でみることが大切です。
♢川崎プロジェクト
また、川崎のプロジェクトでは、手法や方法論の面で新たな試みを行うことができれば、それが研究へと繋がる可能性があると考えます。これまで、三軒茶屋や宇都宮でプレイスメイキングやプレイスメイキングデイズ、プレイス・ゲームというものをやってきましたが、こういったものはプロジェクトをやってきたからこそ、身についた技であります。このようなものを新しいプロジェクトでは身に付けて欲しいと考えます。うちの研究室が弱いのは、デザインや何かをつくるという部分だと感じています。そういった部分に携わることのできるプロジェクトになるかもしれません。

3.ゼミ生に期待すること
自分の専門性を高めてほしいと思っています。例えば、この前卒業したM2はこの春から即戦力として活躍しています。仕事が自分の研究テーマと直結しているので、すぐに行動することができていて、周りからは「泉山ゼミの卒業生は優秀だ」という評価を受けています。このように、自信をもって大学院まで頑張っていただければ専門性をもった人材になれると思います。自分に自信をもって、新しいことにどんどん挑戦していってほしいですね。
ゼミ生に求めることとしては、クリエイティビティですね。例えば、イベントの企画であったり、1つ1つの物事に対してクリエイティビティ溢れるものを出してほしいですね。建築の設計ができるからといって、必ずしもクリエイティブであるとは限りません。一つの物事に対してこだわりを持ち、切磋琢磨していくことで、クリエイティビティは高まっていくと考えます。
また、セミナーへの参加であったり、現場への参加を積極的に行って、報告していただければ絶対褒めますので、応援しています!
あとは先生と学生という立場に捉われてほしくないですね。人と人としてフラットに、また研究のパートナーだと思っているので、気軽に話してください。
4.都市計画研究室(泉山ゼミ)5周年について
2025年度は、都市計画研究室(泉山ゼミ)5周年ということで、今までの研究室活動を振り返るプロジェクトを計画しています。今のところ明確に決まっているのは、5周年記念本を出すのとその本を基に研究室活動を外部に発信するイベントを開催するという目標です。具体的なイメージは、参考例も集めながら、ゼミ生と一緒に考えていきたいですね。今までの活動をまとめることも大切ですが、イベントや記念本等を通して見えてくる未来に繋がるアウトプットもできると良いと思います。以前大学院生会議で、泉山ゼミの将来像・ビジョンについてまとめたものがGoogleサイト(研究室内サイト)にあるのですが、それがワークショップでまとめたもので終わってしまっているので、そういったものを振り返りながら、進めてもらえたらと思います。あと25〜30年、今の学生が50歳くらいになるときにこのゼミはなくなりますが、そのときにどうありたいかというのを考えながらやってもらえると良いですね。
5.マガジン係からの質問
柚崎:都市計画研究室(泉山ゼミ)のOBOGが即戦力として社会で活躍できることにはどんな背景がありますか。
泉山先生:卒業設計や卒業研究に対する指導がメインの研究室に比べて、私は卒業研究に対しての指導に加えて、人を育てていきたいと思っているので、研究以外にも悪いところがあれば、直していけるように指導していますね。研究室全体でのグループ活動が多い点や、係という役割を分担してやっているところも影響していると思います。また、卒業研究を2人1組で行っていくことで見えてくる悩みや課題をどうやって乗り越えていくかというのも人が成長していくポイントだと思います。
柚崎:クリエイティビティを養っていくのに必要なことはなんですか。
泉山先生:研究にも通づる話なのですが、パソコンで考えすぎると、記録が全てテキスト情報になってしまうので、自分で図やダイアグラムを作っていくことが大切です。もっと手を動かして、紙やiPadで考えてみてください。例えば、「賑わい」という言葉ひとつにしても、実際に空間としてどのようなイメージがあるのか人によって考えているものは違っていて、その共有をしていくためには図を自分で書いて説明していかないといけません。手で考えていくことが失われている気がします。
及川:自分たちは建築学科であり、建築設計についても多く学んできましたが、都市計画と設計の結びつきについて詳しく教えて下さい。
泉山先生:みなさん1年後期のデザイン基礎Ⅱの設計で「彫刻のためのギャラリー」という課題に取り組んだと思います。あれは、彫刻をどう見るか見られるかということを空間スケールなどを含めて勉強していく授業です。僕は扱う建築の規模が大きくなっていくということは都市のスケールも上がっていくということだと思います。都市全体を見ることも大切ですが、エリアとプレイスにズームアップしたり、スケールを行き来していくことが基本で、建築物に加えてパブリックスペースや様々な場所も考えているという風に捉えていくと良いと思います。なので、建築から都市を変えていくこともできますが、建築だけでは都市は変えることはできません。全体の人の空間、場所を変えていくことが都市を豊かにしていくことに繋がっていきます。
また、都市の30%は道路なんです。泉山ゼミでは道路に関する研究が多いのですが、建築物も道路に面していないと建てられませんよね?したがって、建築学科として道路に向き合わないと街を変えていくことはできないんですよね。
建築用の模型を作ったり、図面を書いたりしていく建築設計のアプローチやスケールを超えて、都市がどう豊かになっていくのかというのを目指していくのが都市計画になります。その方法としては、制度、計画、社会実験など様々なものがあります。また、ハード整備をするだけでよくなる場所もあれば、全部やっていかないといけない状況もあります。色々なシチュエーションがある中で、必要な戦略と戦術を考えていくことが都市計画の面白いところですね。
及川:外部の大学や海外からの研究生が入ってきている中で、長期的にみてどんなゼミにしていきたいですか。
泉山先生:日本大学は良くも悪くも内向的な部分が多いと思います。その中で、外部から大学院に進学したり、海外から学生が来ることは良いと思います。人数が多いからこそ、ここが全てと錯覚しやすい環境でもあります。そのような中で、外部から人が来てくれることで、自分たちの認識が広がり、外の世界と接続しやすくなります。そのため、毎年一人は外部から来てくれると、嬉しいですね。
また、常に最先端でありたいと思っています。新しい挑戦や研究、プロジェクトに常に取り組んでいきたいです。あと25年は研究室を続ける予定なので、繰り返すこともありながらも新しいことを続けていきたいですね。
6. まとめ
都市を学ぶことに加えて、楽しんでもらいたいです。研究という目の前のことだけでなく、自分が理想とするまちを作っていくために、新しいことへチャレンジしてほしいと思います。お互いに切磋琢磨して高め合っていきましょう。
おわりに
今回のマガジンでは2025年度の研究室活動に向けて泉山先生に話を伺いました。
2025年度になり、大学院生の人数も多くなり、新しいユニット体制での活動がスタートしました。また、ゼミ生を中心に5周年記念プロジェクトの検討なども行っており、都市計画研究室(泉山ゼミ)としてさらにパワーアップが期待される1年になります。
私たち都市計画研究室(泉山ゼミ)のゼミ生もこのインタビューでの先生の言葉を今一度心に留めて、2025年度の研究室活動に励んでいきます。
今後の活動もHPやInstagramで発信していきますのでご期待ください!
文責:及川瞭太、柚﨑廉太朗