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【号外】地方都市・海外都市で現地調査を行ったゼミ生にインタビュー

2026.07.03

はじめに

 本記事では、都市計画研究室(泉山ゼミ)で実施する研究・調査のイメージを発信するため、海外や地方都市で現地調査を行ったゼミ生を対象に、インタビューを実施しました。
 インタビューでは、海外で調査を実施した卒業生の深津壮さん・佐野充季さん、博士前期課程2年生(以下、M2)の山之内陽起さん・細矢瑞稀さん、地方都市で調査を実施した卒業生の中村佳乃さん、M2の山之内陽起さん、博士前期課程1年生(以下、M1)の稲盛大翔さん・清水とおるさんに現地調査を決めたプロセスや現地調査を通して、得られたことを伺います!

※本記事は、昨年度(2025年度)にインタビューした内容を基に、記事を執筆しております。


卒業生:深津壮さん(シンガポール)

※インタビュー時はM2

♢研究する論文のテーマ
 海外で多く利用されているBID制度というエリアマネジメントの仕組みに着目した研究を行っています。

♢調査に行った場所
 シンガポールのタンジョンパガー(Tanjong Pagar)やラッフルズプレイス(Raffles Place)、シンガポールリバー(Singapore River)に行きました。

♢調査内容 
 エリアマネジメント団体が実施する施策を実際に見るため、現地で撮影・記録しました。

♢現地調査を決めた時期
 M1の9月に調査に行きましたが、現地調査を決めた時期は学部4年生(以下、B4)の10月です。卒業論文でエリアマネジメントについて学ぶうちに、BID制度を知り、海外での調査に興味を持ち始めました。

♢現地調査を決めた理由
 
中心的に実施した調査は、ヒアリング調査ですが、現地の方が話を聞きやすいのもありますし、エリアマネジメント団体が実際に、空間をどのように活用しているのかを調べるため、現地調査に行きました。

♢エリアマネジメントにおける海外と日本の違い
 日本でエリアマネジメントと呼んでいるものが、海外ではプレイスマネジメントと呼ばれています。日本では、いきなりエリア全体を良くするという考えが多いですが、海外では、プレイスを最初に良くすることで、最終的にエリア全体が良くなるという考えなので、プレイスを中心に捉えています。そのため、活動が可視化されやすく、住民にも分かりやすくなっている印象です。

♢シンガポールに行って感じた日本との違い
 シンガポールは、東京23区と同じぐらいの面積ですが、ちょっと歩いただけで特色が変わる点が東京と違うと思います。チャイナタウンやリトルインディアなど、様々な国の文化を体験できるのは、人種のるつぼであるシンガポールならではだと思います。
 オープンカフェやオープンテラスなどの外の席を利用する人が多い印象でした。カフェの外にモニターがついていて、テラス席のみんなでサッカー観戦している光景を見ました。日本人は、室内で涼むためにカフェに行くことが多いですが、シンガポールでは外の席やベンチを利用する人が多かったです。

エリアマネジメント活動の効果が確認できるシンガポールの公園の様子(撮影:深津)



♢論文の詳細はこちら
日本都市計画学会 都市計画論文集
日本大学理工学部建築学科優秀作品集「STUDIO WORKS」


卒業生:佐野充季さん(オーストラリア・メルボルン)

※インタビュー時はM2

♢研究する論文のテーマ
 研究している論文のテーマは、「Liveable City」です。「Liveable City」とは、文字通り、住みやすい都市という意味ですが、その「Liveable City」を形成するための計画モデルに着目した研究をしています。文献調査の段階で、オーストラリア・メルボルン市(Melbourne)の「Liveable City」実現に向けた調査・計画・施策の各段階に着目して、整理したうえで、施策展開における効果検証の部分を現地で調査しました。

♢調査の場所
 オーストラリア・メルボルン市のCBDという中心市街地で調査を実施しました。

♢調査の内容
 主に、アクティビティ調査とヒアリング調査を実施しました。メルボルン市で新たに開発をするときに、路地を整備するという施策や元々あった駐車場を広場に変える施策があるため、この2つの施策の効果を現地で観察しました。また、「Liveable City」実現に向けた施策展開の方針や行政機関と学術機関の連携などを明らかにするため、メルボルン市と王立メルボルン工科大学を対象に、ヒアリング調査を実施しました。

♢現地調査を決めた時期
 10月中旬に現地調査へ行きましたが、アクティビティ調査をしようと決めたのは、直近の8月上旬でした。現地でのヒアリング調査については、M1の3月頃から考えていました。

♢現地でヒアリング調査を行う理由
 オンラインのヒアリング調査と、現地のヒアリング調査では、温度感に差があって、現地調査の方が聞ける話が多いと思います。例えば、オンラインでのヒアリング調査では、こちらが質問したことだけに、アンサーが返ってくるようなイメージですが、現地では、実際に空間を示しながら、話が展開されるというイメージがあり、雑談を交えながら、色々な話が引き出せたりするのではないかと考えています。実際に、私が現地でヒアリング調査した際には、どのような協力体制で施策に取り組んでいるのかやメルボルン市の研究者においての「Liveability」への関心など、相手の方が質問内容以外にもさまざまな内容を話してくれました。

♢メルボルン市を訪れて
 研究者の視点から見て、面白いと感じた点は多くあります。まずは、道路の使い方です。車道の中央や端に駐車場があるため、建物に利用できるスペースを埋めることなく、駐車できる場所を確保しています。これにより、建物密度が高まり、土地利用に無駄がないと感じました。また、公園や広場は少なかったですが、その代わりに、道路空間にパークレットを設置したりと、公園や広場以外の部分で滞留空間を形成している点も印象的でした。また、それぞれの道路に、細かく役割が設定されている点も面白かったです。計画の中で、ストリートのヒエラルキーを設定しているのは知っていましたが、現地でアクティビティを観察することで、より役割分担を実感することができました。

メルボルンのオープンテラスの様子(撮影:佐野)



♢論文の詳細はこちら
日本大学理工学部建築学科優秀作品集「STUDIO WORKS」


卒業生:中村佳乃さん(福岡県福岡市)

※インタビュー時はM2

♢研究する論文のテーマ
 「都市再生アイレベル」を研究しています。都市再生の中でも、地方都市の公共貢献として、アイレベルに着目する研究を行っています。

♢調査に行った場所
 福岡県福岡市の天神と博多です。

♢調査の内容
 M1の3月に一度、福岡市とエリマネ団体を対象に、現地でヒアリング調査を実施しました。M2の6月には、「建築計画概要書」という現地でしか発行できない資料を取りに行きました。8月には、GoProでの撮影、建物のセットバックの長さを測る調査を現地で実施しました。ただ、夏の調査は暑いのでおすすめはしません(笑)。

♢現地調査を決めた時期
 最初にヒアリング調査を実施すると決めた時期は、M1の11月か12月頃でした。セットバックの調査を実施するため、現地に行くと決めたのは、M2になり、研究計画がある程度定まってきてからです。

♢現地調査を決めた理由
 M1で文献調査を中心に研究を進めていくうちに、文献調査のみでは分からないことが多く出てくるようになりました。そこで、それらを知るため、現地調査を実施する必要があると考えたことがきっかけです。

♢現地でヒアリング調査を行った理由
 やはり、オンラインでヒアリング調査を実施するよりも、現地でヒアリング調査を実施する方が聞けることが多いと思います。例えば、直接会うことで会話の流れを掴みやすく、予定していた以上のことを聞き出せることがあります。ここに、現地でヒアリング調査を実施するメリットがあると考えます。

♢現地調査で得られたこと・思ったこと
 まず第一に、現地でないと得られないものが多くあると実感しました。地方都市の研究をしているため、実際に都市を歩いてみないと、分からないことが多くありました。また、地域の方々に直接会って話すことで、地域の実情まで深く知れる点が良いと思います。実際に抱える課題感などは、文献調査のみで知るのは難しく、ヒアリング調査を実施することでしか得られない部分だと感じました。

福岡市のアイレベル(撮影:中村)



♢論文の詳細はこちら
福岡アジア都市研究所「都市政策研究」


M2:山之内陽起さん(卒業論文:熊本県熊本市/修士論文:デンマーク・コペンハーゲン)

※インタビュー時はM1

〇熊本

♢研究する論文のテーマ
 地方都市の中心市街地における複数の公共空間活用に関する研究を行いました。

♢調査に行った場所
 B4の10月末くらいに、熊本県熊本市の花畑広場、上通り・下通りアーケード街へ現地調査に行きました。

♢現地調査を決めた理由
 神奈川県出身ということもあり、地方都市の研究を行う上では、現地に行き、実態を知る必要があると感じたためです。やはり、文献調査のみでは、実際にいる人の数や公園、広場でのアクティビティの種類等、分からない部分が多く、現地調査を実施することを決めました。

♢現地調査で得られたこと・思ったこと
 
調査を実施した2024年頃までに、熊本市は、ウォーカブルビジョンを掲げることを念頭に置いていました。現地へ行ったときに、自治体が考えている中心市街地の使い方と、公園、広場や各商店街を管理している人たちの考え方に、少し違いがあることが、現地のヒアリング調査を通して分かりました。ウォーカブルビジョンを策定する際にも、自治体のみが主導するのではなく、管理運営者の方々と協議をしたり、その方々の意見を取り入れたりすることの大切さを実感できました。
 また、卒業論文提出後には、熊本市の中心部の上通商店街にあるカフェ、OMOKEN PARKにて、地元の方に研究成果報告し、フィードバックをいただきました。

熊本市での広場活用の様子(撮影:山之内)

熊本市の中心部ー上通商店街にあるカフェ、OMOKEN PARKにて、研究成果を発表する山之内さん
〈出典〉:一般社団法人ソトノバ「プレイスメイキングを地方都市から問い直す|ソトノバTABLE#54 in熊本」



♢論文・現地報告会の詳細はこちら
日本都市計画学会 都市計画報告集
一般社団法人ソトノバ「プレイスメイキングを地方都市から問い直す|ソトノバTABLE#54 in熊本」


〇コペンハーゲン

♢研究する論文のテーマ
 修士論文では、デンマーク・コペンハーゲン(Copenhagen)にあるストロイエ(Stroget)を中心とした、歩行者空間化の政策及び空間評価に着目した研究をしています。

♢調査に行った場所
 主に調査に実施した場所は、デンマーク・コペンハーゲン市内の中心部です。もう少し具体的な場所でいうと、ストロイエ(Stroget)やニューハウン(Nyhavn)を調査しました。

♢現地調査を決めた時期
 研究室配属の学部3年生の段階から、デンマーク・コペンハーゲンの都市計画に興味がありました。デンマークは、自転車の政策が進んでいて、人中心の空間と自転車都市の両方を兼ね備えている点が魅力的だと思ったためです。そのため、修士研究でコペンハーゲンに実際に行き、研究してみようと考えました。

♢現地調査で得られたこと・思ったこと
 オープンカフェが至る所にありました。海外では、日本に比べ、オープンカフェを行うための許可申請のハードルが低く、簡単にできる印象でした。また、海外都市の自転車政策はとても進んでいて、一方通行の自転車道が設けられていたり、自転車専用のブリッジが設けられていたりして、歩行者空間のみでなく、自転車のことも考えた巧みな動線計画が施されている印象を受けました。

♢コペンハーゲンに行って感じた日本との違い
 制度的な面が違うのは、もちろんですが、自治体に着目してみても大きな違いがあるように感じました。自分がヒアリング調査を実施したコペンハーゲン市の職員の方は、博士号を持っている方で、専門知識が豊富だと感じました。日本では、専門コンサルタントが主体となり、まちづくりに関するさまざまな調査・分析を実施するイメージがありますが、コペンハーゲンでは自治体が高い専門性を持ち合わせているため、自治体自身で、企画立案やデータ分析を行う点がすごいと思いました。

Gehl事務所でのヒアリング調査の様子(撮影:山之内)


M2:細矢瑞稀さん(アメリカ・ミルウォーキー/ロサンゼルス/サンタモニカ)

※インタビュー時はM1

♢研究する論文のテーマ
 アメリカのマーケットの運営手法や空間、人のアクティビティについて研究しています。

♢調査の場所
 アメリカ・ウィスコンシン(Wisconsin)州のミルウォーキー(Milwaukee)市で開催されたThe 12th International Public Markets Conferenceと、カリフォルニア(California)州のロサンゼルス(Los Angeles)市のMar Vista Farmers Market、サンタモニカ(Santa Monica)市のSanta Monica Main Street Farmers Marketです。

♢調査の内容

 ミルウォーキーでは、Project for Public Spaces主催のInternational Public Markets Conferenceに参加し、発表を聞きました。ロサンゼルス、サンタモニカでは運営者へのヒアリングやGoProでのアクティビティ調査によって、活動や滞留の場所を記録しました。

♢現地調査を決めた時期
 B4の7月頃には、海外での調査を決めていました。アメリカに決めた時期は、B4の10月にカンファレンスの開催情報が出たので、それを見て決めました。

♢現地調査を決めた理由
 卒業論文を進めていくうちに、海外の方がマーケットが日常的に開催され、地域に根付いていることが分かり、そのときにマーケットの研究をする上で、海外での調査をした方が良いと感じたためです。

♢マーケットにおけるアメリカと日本の違い
 ロサンゼルスのマーケットを見たときに、テントが日本の4倍ぐらいのサイズだったことに驚きました。テントの中を巡ることもでき、滞留している人もいました。とにかく、日本に比べて敷地が広かったです。車社会ということもあり、道路も広かったため、マーケットを開催する際に広さで困ることはなさそうでした。
 運営面では、出店者が自身のテントを持ってきて、売り場を作る方式になっていたのが印象的でした。日本では、運営側がテントやファニチャーを用意して、出店者は来るだけなので、その部分に違いを感じました。また、サンタモニカのファーマーズマーケットでは、駐車場の近くに農産物が集まっていて、奥にさまざまな活動をする人がいるという空間の分け方がなされており、買い物をしたい人は買い物だけして帰ることもできるし、1日過ごしたい人は、奥に行けば良いというように、選択できるようになっていると感じました。音楽を演奏している人やヨガ教室など、日本にはない空間の使い方がされていました。
 日本のマーケットは買い物メインで、ついでに食べて帰るぐらいの使い方がされていますが、アメリカのマーケットは、地域コミュニティが集まるテントや犬の散歩をする人、ボールで遊ぶ子供たちなど、そこで1日過ごすことを目的とする人が多い印象でした。

マーケットのテントに地域の方々が集まっている様子(撮影:細矢)


M1:稲盛大翔さん・清水とおるさん(兵庫県神戸市)

※インタビュー時はB4

♢研究する論文のテーマ
 テーマは、道路空間活用で、時間帯別に道路規制を行っている道路(以下、タイムシェアードストリート)を対象に、空間特性及びネットワークを明らかにする研究を行っています。

♢調査の場所
 兵庫県神戸市のサンキタ通りを対象に、現地調査を実施しました。

♢調査の対象をサンキタ通りに決めた理由
 全国にあるタイムシェアードストリートの事例の中で、ハード面の整備と道路占用などのソフト面の整備を同時に実施した珍しい事例であるため、サンキタ通りを対象としました。

♢調査の内容
 現地では、主にアクティビティと道路の特徴を見ました。撮影したデータを使い、交通量の分析をしています。このような調査を行う理由は、タイムシェアードストリートが、時間帯ごとに車が通れたり、歩行者天国になったりする特徴があるため、時間帯によるアクティビティ及び道路ネットワークの差を分析したいと思ったためです。
 また、サンキタ通りの現状や課題を知るために、神戸市の方を対象にヒアリング調査を実施しました。

♢現地調査を決めた時期
 決めた時期は、結構早めだと思います。実際に、現地調査へ行ったのは10月下旬ですが、5月上旬の研究テーマが定まった頃には、現地調査へ行きたいと考えていました。

♢現地調査を決めた理由
 Web上に記載のある情報や写真のみでは、限界があると思ったためです。

♢現地調査のメリット
 東京にいるのみでは分からない、神戸市ならではの課題や事業について、行政の方から聞けたことが良かったです。直接、担当の方とお話ししたことで、関係者視点からの貴重な話を聞くことができました。また、実際にサンキタ通りを訪れたことで、人を中心に考えたデザインや夜の歩きやすさをどのように確保しているのかを学ぶことができました。その他にも、道路にゴミが散乱しているなどの現場の課題も直接感じることができたため、研究を進めていく上で参考になりました。

神戸での現地調査の様子(撮影:清水)



♢論文の詳細はこちら
日本大学理工学部建築学科優秀作品集「STUDIO WORKS」


おわりに

 本記事では、海外または地方都市で現地調査を実施したゼミ生へのインタビューを通じて、現地調査に至るまでの経緯や、現地で得られた知見を伺いました。
 現地調査を決めた時期やそのきっかけなど、海外や地方都市での調査を検討する上で参考となる点をお聞きすることができました。
 また、都市計画研究室(泉山ゼミ)で実施する研究・調査のイメージを知るきっかけとなれば幸いです!
                                     文責:及川瞭太・柚﨑廉太朗

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