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【審査付論文掲載】パブリックスペースにおけるストリートパフォーマーの制度の導入可能性―東京都、柏市、オーストラリア・メルボルン市の制度を比較分析―

2022.10.27
Photo1 Busker on Swanston St., Melbourne, Austraria|メルボルン市スワンストンストリートのバスカー(筆者撮影)

日本大学理工学部建築学科(都市計画研究室(泉山ゼミ))の泉山塁威(いずみやま・るい)・助教と、猪飼洋平(一般社団法人ソトノバ・パートナー)、松川真友子(フリーランス)は、「公共空間におけるバスカー制度の可能性と課題―東京都「ヘブンアーティスト事業」、柏市「ストリートミュージシャン登録制度」及びメルボルン市「Busking Permits」との比較を通じて―」の研究成果を発表しました。研究により、国内の公共空間におけるバスカー制度導入の可能性と課題を許可制度、普及啓発事業、活動場所、政策的位置付けの考察を通して明らかにしました。

掲載論文

「公共空間におけるバスカー制度の可能性と課題―東京都「ヘブンアーティスト事業」、柏市「ストリートミュージシャン登録制度」及びメルボルン市「Busking Permits」との比較を通じて―」泉山塁威、猪飼洋平、松川真友子、日本建築学会計画系論文集、第87巻、第800号、pp. 1975-1986、2022年10月 査読有り

1.発表者

・泉山塁威 日本大学理工学部建築学科・助教 都市計画研究室(泉山ゼミ)
・猪飼洋平 一般社団法人ソトノバ・パートナー
・松川真友子 フリーランス

2.論文概要

これまでの公共空間活用の規制緩和は収益活動が中心であり、エリアマネジメント団体などの団体による道路占用許可が緩和されてきました。また、主に規制緩和されたのは道路法の道路占用許可の緩和であり、路上イベントなどの許可で必要な道路使用許可(道路交通法)は規制緩和がなされていないのが現状です。

国内では、非収益活動のうちストリートライブやパフォーマンスを行うバスカーは基本的には個人で活動しており、駆け出しの際には路上ライブや路上パフォーマンスを行い、著名になってくるとイベントなどに呼ばれるようになります。東京都の「ヘブンアーティスト事業」などの個別の事業はあるが、公共空間におけるバスカーなどの個人のアクティビティにはあまり焦点が当たっていません。イギリス・エコノミスト誌「世界で最も住みやすい都市ランキング」で2017年まで長年1位だったオーストラリア・ヴィクトリア州・メルボルン市では、恒常的にストリートパフォーマーの活動が見られました(Photo1)。これに対し、筆者は国内のようにエリアマネジメント団体のイベントだけでなく、個人のバスカーが公共空間で活動するための制度や仕組みについて問題意識を持ちました。

本研究の目的は国内のバスカー制度の概要と課題を把握した上で、海外のバスカー制度との比較により、国内の公共空間におけるバスカー制度導入の可能性と課題を明らかにすることです。

本研究の方法は、2章で国内のバスカー制度として、東京都「ヘブンアーティスト事業」、柏市「ストリートミュージシャン登録制度」の概要と運用の把握を、インタビュー調査により行いました。3章で海外都市におけるバスカー制度として、メルボルン市の「Busking Permits」を対象とし、文献調査及びメールインタビューより制度の概要と運用の把握を行いました。4章では、2章、3章で得られた制度概要と実態把握から、バスカー制度の運用の比較考察を行いました。5章では国内における公共空間におけるバスカー制度の可能性と課題を考察しました。

以上より、国内の公共空間におけるバスカー制度導入の可能性と課題を許可制度、普及啓発事業、活動場所、政策的位置付けの考察を通して明らかにしました。

本研究成果は、日本建築学会計画系論文集に掲載されました。

3.発表雑誌

論文タイトル
「公共空間におけるバスカー制度の可能性と課題―東京都「ヘブンアーティスト事業」、柏市「ストリートミュージシャン登録制度」及びメルボルン市「Busking Permits」との比較を通じて―」
The potential and challenges of busker system in public space-comparing the Tokyo metropolitan government’s “heaven artist project, ” Kashiwa city’s “street musician registration system,” and City of Melbourne’s “busking permits”-
著者名: 泉山塁威、猪飼洋平、松川真友子
雑誌名: 日本建築学会計画系論文集 第87巻、第800号、pp. 1975-1986
掲載日: 2022年10月1日(土)
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.87.1975

問い合わせ先

担当者:日本大学理工学部建築学科助教・都市計画研究室(泉山ゼミ)
泉山塁威(いずみやま・るい)
メールアドレス:izumiyama●urbandesignplanning.jp ●を@izumiyama

用語解説

本研究において、バスカー、パフォーマー、ミュージシャンなどを固有名詞や特記がある場合を除き総じてバスカーと表記を統一します。バスカー(Busker)は大道芸を行う人、音楽を演奏する人などを指し、路上で演奏すること自体はバスキング(Busking)と表現します。

代表的な掲載・図版

Fig.4 Performance Places of Heven Artists, Tokyo Metropolitan|東京都ヘブンアーティストの活動場所マップとリスト
Fig.12 Map and list of busking available area, resergation area and prohibited area, City of Melbourne|メルボルン市 バスキングが可能なエリア、予約が必要なエリアおよび禁止エリアのマップとリスト
Fig.13 Policy position of permit systems and public awareness programs, Melbourne|メルボルン市 許可制度と普及啓発事業の政策上の位置づけ

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