PROJECT

#WS02 2022年度日本建築学会・学生と地域との連携によるシャレットワークショップー紫波町日詰のまちづくりデザインを考えるvol.2ー

2023.06.23

2022年8月27日〜9月25日、一般社団法人建築学会と住まい・まちづくり支援建築会議(教育普及部会)主催のもと、全国の建築・都市系を学ぶ学生が集まりまちづくりデザインを考えるシャレットワークショップ(以下、シャレットワークショップ)が岩手県紫波町で開催されました。
毎年行われているシャレットワークショップですが、コロナの影響で2年ぶりの開催となり、日本大学含む11大学、18名の学生が集まりました。今回は公募ではなく、講師陣の所属研究室学生が参加する形式となりました。

シャレットワークショップとは、欧米の都市デザインやまちづくりで多く実施されているワークショップの形式で、短期間に集中して課題を探り、具体的な解決法を探るものです。
コロナ禍の中での開催ということもあり、従来の進め方ではなく、8月27日〜29日に短期間で中間発表まで行う第1期、9月10日のオンラインエスキスやSlackなどのグループ議論、9月24日~25日の最終発表を行う第2期といったように、約1ヶ月をかけて提案を行いました。

グループワークの様子(撮影:高鍋剛)

紫波町日詰地区を知る
1日目(8月27日)は、紫波町日詰地区のまちの動きについてレクチャーを受けました。その後は、主にオガールから紫波中央駅、日詰地区のまち歩きを行い、途中途中で紫波町のまちづくりに関わる方々のお話を聞き、地域特性を把握しました。
紫波町は人口約3万人のまちで、岩手県の県庁所在地である盛岡から約20km離れた岩手県の中央に位置にするほか、「オガールプロジェクト」で有名なまちです。オガールプロジェクトとは、Public Private Partnership(通称:PPP)手法を用いて、①紫波中央駅前の未利用町有地、②役場本庁舎の老朽化・分散している庁舎、③図書館新設の要望といった自治体課題を公と民で解決したものです。
そんな岩手県紫波町で開催された本シャレットワークショップは2018年に続いて2回目。2018と同じく紫波町日詰地区を対象とし、提案を行いました。

まち歩きでメモを取る小野寺瑞穂さんと福井勇仁さん(撮影:高鍋剛)

グループワーク
本シャレットでは、以下の4つのグループに分かれ、中間発表までのグループワーク、その後のオンラインによるグループワークを重ね、自分たちの提案を深めました。
A.紫波中央駅と日詰商店街をつなぐ
B.日詰平井邸
C.旧紫波郡役所庁舎
D.旧大森書店

グループワークの様子(撮影:高鍋剛)
先生方とのエスキスをする小野寺瑞穂さん(撮影:高鍋剛)

発表会(中間発表会・最終発表会)
まず、8月27日〜29日の第1期では、歴史的資源を活かしつつ、新たなエネルギーを感じさせるエリアとしてマネジメントをする観点からの実践的な計画・デザインを地域に提案しました。そして9月24日~25日の第2期では、約1ヶ月のリモートワークや個別作業、オンラインでのエスキスなどによって完成したプロジェクト提案を最終発表として紫波町の皆さんにプレゼンしました。

最終発表会で発表する福井勇仁さん(撮影:高鍋剛)

以下、都市計画研究室(泉山ゼミ)の学生が関わった2つのグループの提案を紹介します。

グループA:「場」を紡ぎ、やがて「路」となる。
提案者:福井勇仁(日本大学)・ 長谷川雅(明治大学)・ 玉谷希(山口大学)・ 古川翔(九州大学)・ 斎藤桃乃(工学院大学)
紫波町には、オガールエリア(紫波中央駅)と日詰商店街エリアというふたつの特色を持ったエリアがあります。しかし、中間のエリアは住宅街で魅力に欠けており、分断されている状態です。そこで、中間のエリアにおいて駅前空間+線路沿いよこみちと公園+商店街へとつながる一本道を連続的に再編することで、地域全体のつながりを生み出す提案をしました。
提案においては、①チャレンジして自ら紫波文化を作り上げる生活、②距離と時間を楽しむ最先端の生活、③子育て層から高齢者まで安心して楽しく暮らす生活、の3つの新たなライフスタイル実現を目指し、住民がまちに対してアクションを起こす「つくり手」になるよう、各ポイントの空間を示しました。
例えば、紫波中央駅から日詰商店街へ伸びる住宅街の街路では、緑化を行い、沿道住民が住み開きを行うような「住民の第2の庭であり、アクションを起こす場」と再編していく提案をしました。

提案パネル1枚目(グループA)
提案パネル2枚目(グループA)

グループB:ひらい×みらいLAB−ひらファンと育む地域のよりどころ−
提案者:小野寺瑞穂(日本大学)・ 平木僚太郎(芝浦工業大学)・ 栗原稜(富山大学)・ 佐藤歩美(横浜市立大学)
1921年に建てられた平井家住宅。新築祝の披露宴に当時の首相原敬が出席しており、2016年には国重要文化財に指定されました。そんな歴史ある平井家住宅を日詰のランドマークとしてアップデートするには、平井家住宅のファンを増やし、資金を集めながら建築の修繕や新価値の創造をする必要があると考えました。そこで、平井家住宅ならではの新たなコンテンツの追加と共感人口の拡大を図る提案をしました。
提案においては、ひらい×みらいLABの3つの機能(研究、育成、発信)を提示した上で、1Fと庭・2Fの空間にどう落とし込むか、またそれらによって共感人口がどう広がるかを示しました。
例えば、庭に仮設工作物を設置し、人々の動線をつくるとともに、平井家住宅に導入したLABのコンテンツの溢れ出しを創る提案をしました。

提案パネル1枚目(グループB)
提案パネル2枚目(グループB)

他大学や地域との交流
本シャレットは、対面とオンラインで約1ヶ月という時間をかけて提案をまとめました。あらゆる視点から物事を考え、議論をしながら手を動かし、先生方からのアドバイスをもとにまた考えるという流れを繰り返しました。全国各地から集まった大学生ひとりひとりが紫波町日詰地区に向き合い、議論や作業を重ねながら自分たちらしい提案にまとめられたと思います。建築や都市計画などを学ぶ仲間たちと一緒に一つの提案として形にまとめたことは、今後につながるとても貴重な経験となりました。
紫波町の皆さんが温かく学生を迎えてくださったことで、紫波町という地域の魅力を肌で感じ、より良い提案につながったのではないかと思います。

議論する小野寺瑞穂さん(撮影:高鍋剛)
学生同士の交流(撮影:小野寺瑞穂)

講師との交流・学び
学生だけでなく、全国各地から多彩・他分野の講師が集うというのも建築学会シャレットワークショップの大きな魅力のひとつです。大学教授をはじめ専門家など、建築・都市計画系の最前線で活躍する講師陣が一堂に介します。2022年度は計20名の講師による集団指導が行われました。学生1名あたり1名以上の講師がおり、普段の大学生活では得られない環境です。専門分野、強みの異なる集団指導は、学生にとって固定観念にとらわれない柔軟な視点や、都市に対する最先端の知識が得られる貴重な経験でした。

先生方とのエスキス(撮影:泉山塁威)

プロジェクトメンバー
准教授:泉山塁威
B4:小野寺瑞穂、福井勇仁

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