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#WS05 『ヨコハマハーバーシティ・スタディーズ』ワークショップ2023ープレイスとネットワークから構成する『リバブルシティ・ヨコハマ』ー

2023.10.24

 2023年8月27日から9月1日までの6日間、第7回横浜ハーバーシティ・スタディーズ2023(note:https://note.com/ruilouis/n/n6d19e033d246)というワークショップが神奈川県横浜市で行われました。横浜ハーバーシティ・スタディーズとは、2010年に始まった短期集中型のワークショップで、都市や建築に関する専門家と学生が一堂に集まり、都市の再生案を提案することを目的としています。日大からは佐野充季、菅原悠希、前田洋伯、松田晃太、米田康平の5人の学生が参加しました。

以下、講師の皆様のご紹介です。

講師

-ディレクター-
泉山塁威(都市戦略家、日本大学理工学部・准教授、一般社団法人ソトノバ共同代表理事)

-オープニング講演者-
今佐和子(国土交通省都市局)「ウォーカブルシティ」
河北直治(よこはま路上観察学会)「関内・関外の歴史」

-中間講評会ゲスト・レクチャー-
高松誠治(スペースシンタックスジャパン)「街路ネットワーク分析」

-最終講評会ゲスト-
野原卓(都市計画家、横浜国立大学・准教授)
西田司(建築家、オンデザインパートナーズ)
津川恵里(建築家、ALTEMY代表)

-チューター-
荒井詩穂那(首都圏総合計画研究所、一般社団法人ソトノバ理事)
田邊優里子(オンデザイン)
ヤップ・ミンウェイ(建築家、関東学院大学・助手)
松岡大雅(studio TRUE)
永田賢一郎(YONG architecture studio)

-コーディネーター-
片岡公一(都市計画家、山手総合計画研究所)
角野渉(建築家、kadono design NODE)
中津秀之(ランドスケープアーキテクト、関東学院大学)

 今年のプログラム・ディレクターは泉山塁威先生で、テーマは「プレイスとネットワークから構築する『リバブルシティ・ヨコハマ』」でした。このワークショップでは、観光客が多く訪れる関内エリアと比べて多様な用途の混在する関外エリアをリバブルシティ(住みたくなる都市)として再生する提案が求められました。学生たちは異なる大学や学年からなるグループを組み、関内駅周辺エリア、黄金町エリア、伊勢佐木モール、大通り公園、横浜橋通商店街の5つのエリアから1つを選び、提案しました。


 以下、ワークショップのスケジュール、提案の紹介、ワークショップから得られた経験の順に紹介します。

スケジュール

《プレイス・ハンディング・デー》 
 1日目は横浜ハーバーシティ・スタディーズ2023のディレクターである、日本大学理工学部建築学科准教授の泉山塁威先生から、今回の横浜ハーバーシティ・スタディーズ2023のテーマであるプレイスとネットワークから構成する「リバブルシティ・ヨコハマ」についての説明がありました。オープニング・レクチャーでは、国土交通省都市局の今佐和子さんから、ウォーカブルシティについてのレクチャーを受けました。国土交通省が目指しているウォーカブルシティの将来像や、今佐和子さんのウォーカブルシティに対する思いをお聞きしました。その後は、よこはま路上観察学会の河北直治さんから、今回のWS開催地である関内と関外の歴史についてのレクチャーを受けました。これまで、関内と関外がどのように発展し、なぜ現在ではまちの活力が衰退してきているのかをお聞きしました。

「リバブルシティ・ヨコハマ」についての説明を受ける様子

 午後からは、泉山塁威先生と、今回のチューターの方々である、首都圏総合計画研究所の荒井詩穂那さん、オンデザインの田邉優里子さんと関東学院大学助手のヤップ・ミンウェイさん、studioTRUEの松岡大雅さん、YONG architecture studioの永田賢一郎さんと共にフィールドワークを行いました。このフィールドワークでは、個人で気に入ったプレイスを見つけることを目的としています。その後は仮設グループ内でブレインストーミング、ピンナップを行い、気に入ったプレイスなどをシールなどで地図上に可視化しました。
 
 夜には懇親会を行い、WSを共にするメンバーとの交友を深めました。

フィールドワークの様子


《プレイス・デー》
 2日目の午前中は泉山先生からプレイスメイキングについてのレクチャーを受けました。
 午後はグループ編成で、5つのエリアから希望するエリアのアンケートを取り、5、6人のグループに分かれました。その後、グループごとに担当するエリアのプレイスをプレイスゲームによって評価しました。
 グループワークでは、評価したプレイスの魅力や課題、機会、脅威の論点を整理して、短期・長期提案を検討しました。ピンナップでは、グループごとで発表とエスキスを行い、翌日の課題を整理しました。

プレイスゲームの様子


《ネットワーク・デー》 
 3日目は午前中に中間講評会を行いました。その後は、スペースシンタックスジャパンの高松誠治さんから街路ネットワークについてのレクチャーを受けました。街路ネットワークの重要性や、スペースシンタックスをどのように用いるのかなどをお聞きしました。
 午後からはグループごとで、全プレイスでネットワークについて検討しながらグループワークを行いました。この時、あらかじめネットワークの全体像を共有し、大枠を決めました。その後のピンナップでは、グループごとで発表とエスキスを行い、翌日の課題を整理しました。

高松さんのレクチャーの様子


《アイディア・デー》
 4・5日目は最終講評会に向けてグループワーク、ピンナップを行いました。
 午後には発表を行い、ディレクターやチューターの方々から意見を聞き、提案をまとめ上げ、プレゼンテーションボードや発表スライド作成に勤しみました。

4日目ピンナップの様子


《ファイナル・デー》
 6日目は最終講評会を行い、各グループの提案を発表しました。講評会にはゲストの都市計画家の野原卓さん、オンデザインパートナーズの西田司さん、ALTEMY津川恵理さんに加え、地域のみなさんにもお越し頂きました。
 夜には、6日間共に過ごしたメンバーやチューターのみなさん、最終講評会ゲストの方々と懇親会を行いました。

最終発表の様子

 以下、都市計画研究室(泉山ゼミ)の学生が関わった4つのグループの提案を紹介します。

グループA:「過去で結うみらいのエントランス」

提案者 : 佐野充季(日本大学)・松田晃太(日本大学)・柴田拓馬(日本大学)・谷米匠太(浅野工学専門学校)・嶋田光馬(関東学院大学)・水江晴香(東京都市大学)

Aグループプレゼンテーションボード

 関内駅周辺エリアには、横浜スタジアムというランドマークとなる建築や、マリナード地下街という歴史ある地下街があります。また、横浜旧市庁舎を活用した再開発事業や、新たなアリーナの建設が進んでいます。このような背景から関内駅周辺は新たなまちへと生まれ変わり、新たなエントランスとしての役割を担うことが期待されます。しかし、関内駅周辺エリアは、広幅員道路とその上の高架によって関内と関外が分断されている状態であり、エントランスとしての機能を果たしていません。そこで、過去の要素である関外側のエリアと、みらいの要素である再開発を結びつける3つのエントランスを提案しました。

 提案においては、①スポーツで波及する関内外のエントランス(地上)、②関外を”みせる”地下のエントランス(地下)、③人、道、場所が出逢うHamp Node(ブリッジ)、の3つの高さが異なる立体的なエントランスの実現を目指しました。

 例えば、③の提案では、関内側の再開発と関外側の大通り公園をつなぐブリッジをかけ、関内と関外をつなぐと共に、人、道、場所の結節点になり、新たな交流が生まれる場所としています。


グループB:「変化し続ける黄金ストリート」

提案者:米田康平(日本大学)・石見優太(明治大学)・中條めぐみ(東京都市大学)・斉藤健太(関東学院大学)・倉持太介・宮城拓未

Bグループプレゼンテーションボード

 1995年から2004年までの黄金町は違法風俗店が蔓延しており、治安の悪いエリアでした。そこで2005年に横浜市と神奈川県警察によってバイバイ作戦が実施され、違法風俗店が一斉摘発されました。しかし、これを機に小規模店舗は空き家となり閉鎖的なまちになりました。現在はアーティストの住・活動拠点となるよう、NPOが空き店舗を「住居+店舗」として管理。多くのクリエイターが国内に限らず海外からも短期滞在し、活動を行っていく場所となりましたが、かつては風俗街で賑わっていた街だけに、未だに人通りは多くありません。

 そこで私たちは狭小建物やみなとみらいから流れる大岡川などの地域資源を活用し

①安価で借りられる狭小建物の利活用

②多様な人を呼ぶためのネットワークの構築

③短期滞在により住民の移り変わりが多いこと、「季節」「平日・休日」「時間」で街の雰囲気・活動に変化があることから、活動内容や利用者が日々変化する街にし、いつ訪れても刺激のある魅力的な街への変化

④活動を表層化させまち全体を活気ある空間に

 これらを軸に据え、大きな変化を経験した黄金町を対象に、常に変化があり、飽きの来ないまちをコンセプトとし、いつ訪れても新しい表情を見せる街にし、また訪れたい、住んでみたい街へと変化させていきます。


グループC「きっかけを創る伊勢佐木ストリートの再編」

提案者:前田洋伯(日本大学)・橋本瑛(関東学院大学)・村瀬巧(関東学院大学)・イムヒョン(東京都市大学)・茂田耕太郎(法政大学)・田畑駿(明治大学)

Cグループプレゼンテーションボード

 伊勢佐木商店街は、横浜で一番の繫華街「伊勢ブラは港に続く散歩道」のキャッチコピーで有名でした。しかし、横浜の開発地区へ来訪者が多く流入し、伊勢佐木商店街へ訪れる人々は年々減少しています。また、有隣堂などの近代建築の老朽化、違法駐輪、滞留空間が無い、違法風俗店が点在しているなどの問題もあります。

 そこで、私たちはプレイスゲームから、伊勢佐木商店街は4つのエリアで特徴が異なると考え、各エリアごとで提案をしました。

Aエリア:有隣堂のリノベーションと沿道活用

Bエリア:リノベーションと新たな駐輪場を配置

Cエリア:CROSS STREETでの広場活用

Dエリア:日・外共存のインキュベータープレイスと風俗店の移転計画

 提案として、「商店街の課題を解決する提案」と「エリアごとの新たな活用提案」の2つを軸にしました。通り過ぎるだけの伊勢佐木商店街に、訪れたくなる「きっかけ」を創り、住みたくなる「きっかけ」を創ります。これが伊勢佐木商店街周辺をリバブルシティにする「きっかけ」になることを望みます。


グループD「関外エリアの背筋を伸ばす」

提案者:菅原悠希(日本大学)・兼井佑大(慶応義塾大学)・小林翔(関東学院大学)・長縄旺介(横浜市立大学)・服部文則(筑波大学)

Dグループプレゼンテーションボード

 大通り公園は横浜市の関内エリアと阪東橋エリアを結ぶ全長1.2㎞の公園です。直線状に伸びていることから視認性が良く、関外エリアをつなぐ拠点となりうる広大な敷地があります。しかし、公園内を通りたくなるような目的地がないことや、周囲の商店街や商業施設との連携がないという課題を抱えていました。

 そこで、私たちは大通り公園を①自転車ネットワークの拠点、②緑のネットワークの拠点、③食の拠点、④関外エリアの回遊の拠点、の4つの拠点として捉え、公園内の飲食店や緑園、花園による滞留空間、将棋を使った多世代交流空間等の提案を行いました。

 直線状の広大な敷地を活かし、複数の機能や空間、取り組みを提案することで、多様な人々が利用し交流する場を目指します。


様々なアイディアから提案へ

 本ワークショップは、6日間という短い時間で提案をまとめました。各班で誰にとってリバブルなまちにするのか、それを実現するための提案などを議論し、まとめ、チューターのみなさんから意見をいただき、また議論といった流れを繰り返し行いました。理系文系の垣根を越え、様々な学生が集まったため、方向性の違う様々な意見が挙がりましたが、互いの意見を踏まえ、よりよい提案へとつなげました。

ピンナップの様子

他大学の学生や講師との議論・交流

 互いの提案をより良いものにするための議論は、グループ間のみならずグループ外の人とも行われました。ネットワークを考える上で、時には互いの意見が衝突することもありましたが、論点を整理し、共通点を見つけながら議論が進められました。また、最後の交流会では、各班のチューターとしてアドバイスをいただいていた先生方とも交流を深め合い、様々なお話を伺うことができました。

懇親会の様子

 自分たちの提案場所をより良いものにするだけではなく、他の提案場所との関係性も考えながら提案を考える、より実践に近いワークショップでした。今後、プレイスの提案時には、自分の提案場所のみならず、他のプレイスとのつながりやネットワークも考えて提案を行いたいです。

 
 
 
 
 
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プロジェクトメンバー
准教授:泉山塁威
B4:佐野充季、菅原悠希、前田洋伯、松田晃太、米田康平
B3 研究室未配属(当時):柴田拓馬、吉田薫澄

文責:佐野充季、菅原悠希、前田洋伯、松田晃太、米田康平 (著者)

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