PROJECT

#WS06 2023年度日本建築学会・学生と地域との連携によるシャレットワークショップ―甲賀市水口のまちづくりデザインを考える―

2023.10.24

2023年9月6日〜9月10日、一般社団法人日本建築学会住まい・まちづくり支援建築会議(教育普及部会)主催のもと、2023年度学生と地域との連携によるシャレットワークショップ(以下、シャレットワークショップ)が滋賀県甲賀市水口宿で開催されました。
毎年行われているシャレットワークショップですが、コロナの影響もあり4年ぶりに従来のスケジュールで開催され、日本大学含む10大学、24名の建築・都市系を学ぶ学生が全国から集まり、日本大学からはM1の小野寺瑞穂さんと竹中彩さんが参加しました。
また学生に対して、全国各地から大学教授をはじめ専門家など、建築・都市計画系の最前線で活躍する15名の講師が集まり、とても豪華な体制で行われました。

講師陣
阿部俊彦(立命館大学)、泉山塁威(日本大学)、岡絵理子(関西大学)、北原啓司(弘前大学)、黒瀬武史(九州大学)、小浦久子(神戸芸術工科大学)、小林剛士(山口大学)、小林正美(明治大学)、高鍋剛(都市環境研究所)、高橋潤(アルキメディア設計研究所)、志村秀明(芝浦工業大学)、野澤康(工学院大学)、野嶋慎二(福井大学)、野原卓(横浜国立大学)、三輪律江(横浜市立大学)、藪谷祐介(富山大学)他

2022年度のシャレットワークショップ参加の様子はこちら

対象地区:滋賀県甲賀市水口宿
滋賀県甲賀市水口宿は、水口岡山城の城下町として古城山の南に町並みが形成され、特徴的な「三筋町」として発展しました。江戸時代には「街道一の人止場」と言われ、東海道五十番目の宿場としての面影が今もなお残っています。しかし、近年の人口減少や高齢化による担い手の減少、郊外型大規模小売店の進出による店舗・事業所・住居の流出、空き家・空き地の増加によるまちの空洞化は、中心市街地の衰退や生活空間の喪失につながっています。一方で、社寺や曳山祭り、ひとまち街道交流館や旧富田呉服店、ポケットパークや水路など、多くの地域資源が残っていますが、十分に活用されていない状況にあります。

シャレットワークショップの流れ
シャレットワークショップは9月6日〜9月10日の5日間に渡って開催されました。
1日目(9月6日)は、甲賀市水口宿のまちの動きについてレクチャーを受けました。その後は、ボランティアガイドの方と水口中部コミュニティセンターから水口宿東見附跡までまち歩きを行いました。まち歩き後は5グループに分かれ、アウトプットを行い、地域特性を共有しました。

まち歩きにてボランティアガイドの方の説明を受ける様子(撮影:高鍋剛)


2日目(9月7日)からは以下の5つのテーマに分かれ、グループワークを行いました。
①三筋のストリートの再生
②三筋の辻+水口石橋駅
③三筋の辻+市有地
④バスターミナルと交通
⑤水口城跡(西側の東海道)

グループワークの様子(撮影:高鍋剛)


3日目(9月8日)には中間発表会と題し、地元の方に向けて提案の方向性を発表しました。地元の方から提案の質問や実状などの意見をいただきました。それを踏まえ各チーム、最終発表会に向けて、多くの講師とエスキスを行い提案を詰めていきました。

中間発表会にて提案の発表を行う竹中彩さん(撮影:高鍋剛)


4日目(9月9日)は、各グループが提案を詰めていくことに加えて、最終発表会に向けて模型やプレゼンテーションボードの作成に励みました。

4日目の作業の様子(撮影:高鍋剛)


最終日(9月10日)には、甲賀市長の岩永裕貴氏や甲賀市市議会議員の戎脇浩氏をはじめ、地元の方々を招き、最終発表会を行いました。

最終発表会の様子(撮影:高鍋剛)

以下、都市計画研究室(泉山ゼミ)の学生が関わった2つのグループの提案を紹介します。

グループ①:あみだすじ 三筋の新たなストリートの在り方とは
提案者:小野寺瑞穂(日本大学)・柏倉杏菜(関西大学)・前田淳輔(山口大学)・島本匠(立命館大学)・森田彩日(横浜国立大学)
水口宿は、水口岡山城の城下町として三筋からなる紡錘形の街並みが形成されました。江戸時代には三筋の真ん中の通りを中心に東海道五十番目の宿場町としてにぎわい、その後旧東海道の西側はアーケード商店街として栄え、水口の中心的役割を担っていました。しかし、かつて特徴的であった三筋は時代とともに均質化した道へと変わっていきました。そこで、元々ある横の筋に対して、それらを繋ぐように縦の路地を通すことでできる“三筋町”での“あみだくじ”、通称「あみだすじ」を提案しました。
今回は、現地調査等で確認できた3つの空地を縦の路地のモデルケースと位置付け、提案を行いました。具体的には、❶現在酒屋のタンク置き場に使われている空地に対して、タンクを活用した「食の路地パーク」、❷来訪者と地域住民が交わる「宿泊所+交流の場」、❸歴史的建造物の残るエリアにある空地に対して「歴史体験場」を提案しました。今後、空地などが生まれる度、新たな縦の路地として楽しみながらあみだすじを更新していく、そんな光景が広がっていくことを目指しました。

提案パネル1枚目(グループ①)
提案パネル2枚目(グループ①)


グループ③:地域住民が彩るまちのリビング
提案者:竹中彩(日本大学)・重山隼人(富山大学)・久保田美穂(山口大学)・角田有優(立命館大学)・鈴木雄太(立命館大学)
水口宿のほぼ中心に、現在使われていない水口西保育園と新水口宿公園、児童クラブ、子育て支援センターの4つの市有地が集積しています。ここは、水口石橋駅から徒歩5分とアクセスが良く、徒歩15分圏内に児童施設が7つあり、住宅地や交番が近くにあるといったポテンシャルの高さが見受けられます。一方で、利用者がいないことや公園の使い方のイメージがつかないといった課題も見られました。そこで、“暮らしやすさ”と“子育て世代”に着目し、リビングのような見守り合う住民同士の緩やかなコミュニティの場所を提案しました。
提案においては、既存の子育て支援センターや児童クラブに加え、図書館、親子カフェ、農作体験、バスケットコートなど多様な機能を設置しました。さらに0~1歳・2~3歳・4~5歳・小学校低学年・小学校高学年など年齢に合わせた空間を創出し、子育てに特化した提案をしました。

提案パネル1枚目(グループ③)
提案パネル2枚目(グループ③)

地域との交流
本シャレットでは、ヒアリング調査や発表会など地元の方と交流する機会が多いことも魅力のひとつでです。特に初日の夜に行われた懇親会では、水口囃子十七番組の方の演奏による水口囃子を聴いたり、水口囃子の太鼓や鉦を体験させてもらいました。学生全員が水口囃子初体験でしたが、やり方を口頭で教わりすぐに演奏できたのは、使用する全ての楽器が口唱歌で伝承される水口囃子ならではだと感じます。

水口囃子十七番組のみなさん(撮影:高鍋剛)
水口囃子を体験する様子(撮影:高鍋剛)

他大学の学生講師陣との交流
本シャレットの醍醐味は、東は関東から西は九州まで、全国各地からバックグラウンドの異なる学生が集まることです。1人1人が感じた問題意識を共有し、共感するところもしないところも含めて互いの意見をぶつけ合いながら目指す方向性を決めていきます。その中でも、「地域をより魅力的にしたい」この気持ちだけは全員が共通して持ちながら、各学生が得意なことを掛け合わせていくことで、最終的に自分たちらしい提案に繋げられたと思います。
学生だけでなく、多くの講師から指導が行われるのも建築学会シャレットワークショップの魅力のひとつです。エスキスでは、あらゆる視点からアドバイスや意見をもらい、より一層自分たちの提案に厚みを持たせることができました。
例えばグループ①では、三筋のストリートを考えるにあたり、当初1つ1つの筋に役割を持たせながら空き地・空き家を解消することを考えていましたが、北原啓司先生(弘前大学)に「それだと当たり前すぎてつまらないよね。空き地を解消するのではなく、並行する3本の筋をつなげるヒントにならないかな。」というアドバイスをいただいたことで、「あみだすじ」が生まれ、それをもとにより求田多的な提案に繋げることができました。
以上のように、他大学の学生や講師陣との交流により、自分たちも成長することができたシャレットでした。

講師陣とエスキスをする小野寺瑞穂さん(撮影:高鍋剛)

プロジェクトメンバー
准教授:泉山塁威
M1:小野寺瑞穂、竹中彩

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