PROJECT

建築学プロジェクト

2024年度 建築学プロジェクトー東京都心部におけるウォーカブルな都市デザインー 

2026.03.14
東京建築祭2025での発表風景

建築学プロジェクトとは

 「建築学プロジェクト」とは、日本大学大学院理工学研究科建築学専攻におけるプロジェクト型の演習授業です。複数の教員がそれぞれの専門性に基づいたユニットを設け、学生は自身の関心に応じて参加ユニットを選択します。その後、担当教員とのエスキスを重ねながら、提案を段階的に構築していきます。
 教員が携わる様々な実践プロジェクトや調査・研究への参加を通じて、学生自ら実践的な課題を設定し、その目的や調査・設計・実験方法などを企画・実行し、その成果を考察します。こうしたPBL(Project Based Learning)の実践により、これまで修得してきた建築学の理論や技術を社会に実装していくための基礎的な能力の修得を目指します。
 本稿で紹介する内容は、泉山ユニット(担当教員:泉山塁威准教授)を選択した学生が取り組んだ課題であり、都市デザインを軸に、実在する都市空間を対象とした検討を行いました。


課題の詳細

 東京都心部を含む世界中の都市は、E.ハワードの「田園都市」やル・コルビュジェの「輝く都市」などの車中心社会の発想を元につくられてきました。
 しかし近年、2012年のジェフ・スペックの「ウォーカブルシティ」や2016年のカルロス・モレノの「15分都市」に象徴されるように、車中心社会から人中心社会へと発想を転換しようとする都市デザインコンセプトが提唱されています。このように、現在は都市デザインにおいて「100年に一度」といえるパラダイムシフトのまっただ中にあります。
 これらの社会背景を踏まえ、泉山ユニットでは「東京都心部におけるウォーカブルな都市デザイン」をテーマに、都市のネットワークとストリートのデザインマネジメントを構想します。具体的な提案対象は、ネットワークやストリートを中心に、それらの沿道建築や空地に加え、整備後の運営・マネジメントまでを含みます。


対象地区の概要

【お茶の水地区】

 お茶の水地区は、靖国通り沿いの「神田小川町三丁目西部南地区第一種市街地再開発事業」やJR御茶ノ水駅のバリアフリー化工事などを背景に、近年、再開発の機運が高まりつつあります。一方で、再整備に伴う駅改札口の位置変更により、周辺の道路ネットワークは見直しを迫られています。
 また、JR御茶ノ水駅前に位置する茗渓通りは「お茶の水アートピクニック」というマーケットイベントの実施や、日常的な時間帯別の一般車両規制が行われています。現在は、恒常的な歩行者天国化に向けた規制時間延長が検討されており、今後のマネジメントのあり方やお茶の水地区全体の将来ビジョンを検討していくことが求められています。
 以上を踏まえ、お茶の水地区のウォーカブルな都市デザインとして、JR御茶ノ水駅から靖国通りまでのウォーカブルなネットワークと茗渓通りのストリートのあり方を構想します。

お茶の水アートピクニックの様子

【秋葉原地区】

 秋葉原地区は、電化製品、ゲーム、メイドカフェなどに象徴されるオタク文化を求め、外国人観光客を含む多くの観光客を惹きつけてきた地区です。2007年からは、秋葉原タウンマネジメント株式会社が中央通りの歩行者天国の管理やエリアマネジメント広告などの活動を継続的に展開してきましたが、地区全体を見据えた持続的かつ長期的な将来ビジョンは、いまだ十分に示されていません。
 また、近年は新型コロナウイルス感染症の流行や円安の進行などの影響を受け、外国人観光客の動向や地区内の商業環境が大きく変化しています。こうした状況の中で、エリアとしての魅力や競争力をどのように再編し、更新していくかが問われています。
 以上の状況を踏まえ、秋葉原地区では、東京における中央通りのネットワークを基点に、沿道建築、歩道、車道を含めた2040年を見据えた将来的なストリートデザインマネジメントを構想します。

中央通りの歩行者天国の様子

提案内容

【Cross Walk お茶の水 -多彩な活動が溢れ、新たな出会いの生まれるまち-】

提案者:遠藤優奈、五味桃花、菅原悠希、中村佳乃

 お茶の水エリアは、大学や楽器店、歴史的建造物など特徴的な施設が集まり、学生・観光客・ワーカーなど多様な人々が行き交う魅力あるエリアです。
 一方で、歩行者と自動車の動線が交錯し、歩行者の安全性や回遊性が低いこと、また公開空地や空きテナントが十分に活用されていないことなどが課題となっています。
 そこで本提案では、「多彩な活動が溢れ、新たな出会いの生まれるまち」をコンセプトに掲げ、①歩行者と自動車の動線整理による歩行者回遊軸の形成、②公開空地や空きテナントを活用した賑わいの創出を目指しました。
 具体的には、今後想定される地区内の再開発に合わせて駐車場を集約し、路上パーキングの削減と大通り以外への自動車の進入抑制を行うことで、歩きやすい街路ネットワークを構築します。また、お茶の水仲通りや茗渓通りをエリアの拠点として位置づけ、学生の交流拠点や利用者ニーズに合わせた滞留空間の再編を行うことで滞在・交流を促す空間を形成します。さらに、キッチンカーの導入やイベント企画など、多様なアクティビティを展開し賑わいを生み出します。

提案プレボ1枚目(お茶の水)
提案プレボ2枚目(お茶の水)

【AKB “Converge” the Street 〜来街する人・文化の交差による秋葉原らしさの発展〜】

提案者:佐野充季、橋本瑛、深津壮、松田晃太

 秋葉原地区は、戦後の闇市の発展を起源として、商品が街路へと滲み出し、個性の強い店舗が連なる商店街が形成されてきたエリアです。一方で、歩行者空間や滞留空間が十分に確保されていないことが課題となっています。
 こうした状況を踏まえ、秋葉原の魅力を収束(Converge)させ、新たな魅力へと転換(Conversion)を目指すため、「AKB “Converge” the Street〜来街する人・文化の交差による秋葉原らしさの発展〜」をコンセプトに、ネットワークとストリートの2つの側面から提案を行いました。
 ネットワークの提案では、秋葉原に集まる多様な来街者を他エリアへとつなぎ、同時に他エリアの来街者を秋葉原へと誘引することを目指し、中央通りを軸に上野から浜松町までを結ぶLRTを導入します。   
 ストリートの提案では、「歩きたくなる中央通り」をキーワードに、「秋葉原中央通りのモール化」と「つぼ押し」という2つの方策を提案しました。「秋葉原中央通りのモール化」では、段階的に車道空間を縮小し歩行者空間を拡大することで、イベント会場や滞留空間を創出し、多様なアクティビティを促します。「つぼ押し」では、秋葉原の長期的な変化を実現するための先行的な介入ポイントを「つぼ」と捉え、その「つぼ」を優先的に整備する(つぼを押す)ことで流動的な変化を促すことを目指します。

提案プレボ1枚目(秋葉原)
提案プレボ2枚目(秋葉原)

東京建築祭2025での発表

 2025年5月24日(土)に日本大学理工学部駿河台校舎1号館にて、東京建築祭2025の作品展示とプレゼン・講評会が行われました。都市計画研究室(泉山ゼミ)では、2024年度に建築学プロジェクトで取り組んだ課題の成果を展示し、プレゼンテーションと講評会に臨みました。
 講評会には、提案対象地域に精通するゲストとして、お茶の水茗渓通り会の加盟店であるレモン画翠から松永直美さん、秋葉原で活動する秋葉原タウンマネジメント株式会社から加茂義哉さんをお招きし実際に地域で活動する立場から多様なご意見やご助言をいただきました。学生にとって、現場のリアルな視点に触れる貴重な機会となりました。
 今回の取り組みを通じて、東京都心のウォーカブル化に向けた課題と可能性を具体的に捉えるとともに、教員や地域の実践者との対話を通じて、実践的な都市デザインの提案を深めていく場となりました。

東京建築際2025での発表風景
東京建築際2025での展示物

 建築学プロジェクトは、各エリアの実情と向き合いながら将来像を構想する実践的な学びの場となりました。教員や地域の実践者との議論を通じて得られた多様な視点は、学生にとって都市を多面的に捉え、思考を深める重要な機会となりました。PBL(Project Based Learning)の実践により得られた、理論や技術の実装に関する多様な知見を活かし、今後の研究や社会人となった際の提案に活かしていきたいと思います。提案内容等、ご参考になれば幸いです。

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