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都市計画研究室(泉山ゼミ)2023年度博士前期課程1年生 おすすめの都市座談会!

2024.04.11
2023年度前期博士課程1年生の学生たち

はじめに

 今回は、日々都市に関する研究を行う都市計画研究室(泉山ゼミ)の2023年度博士前期課程1年生(以下、M1)のみなさんに、おすすめの都市についてインタビューを行いました。
2023年度2月号のマガジン記事では、M1のみなさんのおすすめの都市や歩き方などを紹介していきます!
※現在2024年度になりましたが、2023年度に当時博士前期課程1年生の学生へ取材を行ったため、2023年度2月号マガジンとして投稿いたします。なお学年表記は取材当時のものになっております。


【小野寺瑞穂】
おすすめの都市:盛岡市
一言で言うと、「内に魅力を秘めた純朴なまち」です。
城下町として発展してきた盛岡の中心市街地には、Park-PFI事業を活用した「木伏緑地」や人・地域の魅力を繋ぐハブとなる盛岡バスセンターなどがあります。その他にも、50年以上続く材木町よ市、神子田朝市などの「市」や雑貨から飲食まで多岐にわたる個店など、地元の人の顔が見える場が多く、新しいものと古いものが混在しながらも共生しています。
そんな盛岡をあらゆる角度で切り取り伝える公民連携プロジェクト「盛岡という星で」も注目してほしいポイントです。発想力豊かで、見る人を巻き込む取り組みはとても魅力的です。

【倉田晃輔】
おすすめの都市:渋谷
一言で言うと、「繋がりながら滞留できるまち」です。
渋谷では、高低差のある土地を活かし、複数のパブリックスペースが街の様々なレベルに生れ、平面だけではない立体的な繋がりを見せています。MIYASHITA PARKや渋谷パルコは、滞留できる空間を整備すると共に、周辺のエリアとのシームレスな歩行者ネットワークを実現することで、街の賑わいを広げる拠点となっています。そういった空間があることで、人と人、建築と建築、建築とパブリックスペースなどあらゆるものを繋ぎ、この繋がりが多様なアクティビティを生み出していると思います。

【竹中彩】
おすすめの都市:札幌市
一言でいうと、「訪れる時期によって異なる魅力を感じるまち」です。
札幌駅と南北の位置に1.5kmの大通公園が東西に広がっており、まちなかに居ながら緑を感じられ、訪れる季節によってまちの雰囲気も変わるのが一番の魅力だと思います。現在では大通公園にPark-PFIなど公民連携手法の導入が検討されており、まちとしても公園を重点的に緑の整備が進んでいくため、今後、緑がまちの魅力をどう形成するかが楽しみです。
さらに、現在、札幌駅を中心に再開発が進んでおり、開発の従前を知ることができることも、今訪れるべきポイントのひとつだと思います。

【飛田龍祐】
おすすめの都市:福岡市
福岡は公共交通が発達し、エリアが集積するコンパクトな都市で、一日あれば目玉となるスポットを回ることができます。ライブなどで何度か足を運んだことがあるのですが、空港から博多までの距離も近く、バスを使えば福岡マリンメッセや福岡paypayドームまで直ぐいけるので利便性が良いです。また、老朽化した建物の建て替えに合わせて高さ制限を緩和する天神ビッグバンといったプロジェクトも進められており、開発としての見どころもあります。少し移動すれば糸島には海があり自然も豊かです。

【福井勇仁】
おすすめの都市:大阪市中崎町、下北沢
一言でいうと、「訪れることで2つの”出会い”があるまち」です。
2つの地域は、共に新旧さまざまな中小規模の建物が建ち並び、密度の高い都市空間が形成されています。この環境が、路地などを奥へ進んでみると、個性豊かな店舗や魅力的な空間と「視覚的に出会える」面白さを提供しています。加えて、個人経営の喫茶店や雑貨屋などが多く集積しており、地域の界隈性が高いです。そのため、地域に滞在することで、店員さんや他のお客さんと自然とコミュニケーションが生まれやすい「人に出会える」面白さもあり、とても魅力的です。


おすすめの都市について議論する様子

  M1の皆さんに各々におすすめの都市の話を聞いたうえで、それぞれがおすすめする都市について議論していただきました。

・中崎町について

(竹中)中崎町に出会ったきっかけは?

(福井)祖父母の家が大阪にあって、梅田のあたりによく遊びに行ってた。あと最近はできてないけど、単純に散歩が好きで中崎町にも散歩が目的で行く。
初めて中崎町に行ったきっかけは、単純に古着を見たくて行ったけど、行ってみたら昔の長屋がそのままお店とかに使われていた。あと、大阪の人にめっちゃ話しかけられたこともあって、おのずと誰かとしゃべることができて、かつ、すごく面白いお店がいっぱいあるのを見て好きになったのがきっかけ。

(倉田)長屋とかリノベーションしてつくってるとか、まちの特徴を残しながらつくるまちづくりは俺も結構好き。渋谷もそうだけど、まちの価値を見極めてつくるっていいよね。

中崎町の街並み(大阪府大阪市)〈出典〉株式会社Roseau Pensant「THE GATE」,https://thegate12.com/jp/spot/2459

盛岡市について

(小野寺)盛岡は2023年、都市計画学会で行ったけど、どうだった?

(竹中)公園の研究をしているから公園をメインで見たけど、まち歩きをする中で個店が多いまちの魅力は他の都市にはそんなにないんじゃないかな。他の都市でもあることはあるけど、それが集積するのがまち歩きの中でちゃんと見えてきたのが初めてで、すごく面白かった。

(小野寺)プロジェクト「盛岡という星で」では、古すぎないけど新しくもないお店を紹介していて、そういった個々の店がまちの中にポンポンある感じだから、古い歴史を持つ店もあるけど、それらが交わってまちが変わっていくっていうのが面白い。札幌でも移り変わりが話に出てたけど、同じようにまちの変化を感じるのも都市を見る上での面白いポイントなのかもしれないね。

(竹中)飛田くんはどう?

(飛田)盛岡は全然行ったことがなかったからあんまり印象はなかったけど、市場みたいなのあったよね?

(小野寺)よ市かな?

(飛田)そう。そこ行ったときに結構賑わっていて定期的にやっている感じがすごく楽しいなって思った。あと、よ市が住宅地に入り込んでる感じが、住民主体ではないかもしれないけれど、住民が参加してやってる賑わい、生み出している賑わいみたいに見えてすごくいいなって感じた。

(小野寺)多分、よ市は住民というか、地元の生産者や商売をする人たちなどが出店する。市の人が運営するとかじゃなくて、商店街振興組合の運営の仕組みにより50年続いているんじゃないかみたいな話もあるよ。好き勝手出来るわけではないけど、出店者・お客さん関係なく、知り合い同士でしゃべりながらとかっていうのがにじみ出て、いい雰囲気をつくってるんじゃないかな。

材木町よ市(岩手県盛岡市)

札幌市・福岡市について

(福井)札幌と福岡は面積が結構大きいことから、観光スポットがめぐりやすいとか、都市が形として整っているっていうのが共通点として挙げられると思うんだけど、札幌とか福岡を歩いたり、移動してる中で整ってる良さって感じる?

(飛田)福岡って、天神とか大名とか、いくつかのエリアがあって、バスで行けばもちろん結構近いなっていうのは感じるんだけど、歩いても気づいたら別のエリアにいるのを感じるくらい密接してる。1日の予定を立てるときもここでご飯食べて、こういう風に回って、こっちではこういうお店みてみたいな感じで、1周回って1日過ごせるっていうのがいいところ。

(福井)札幌に行ったことがないけど、札幌も似たような感じ?

(竹中)札幌は、京都を参考にしてつくられてたって言われてて、住所がわかりやすいっていうこととか…。整っているからといって、全部が同じ雰囲気じゃなくて、建物の表と裏みたいに、碁盤の目の道にも、ちゃんと表と裏みたいなのが出てきてどんどん移り変わっていくのは結構面白い。

(小野寺)夏ぐらいに行ったとき、平行な道を1時間ぐらい駅に向かう方向に歩いたことがあって、川もずっとまっすぐだけど、それに沿って歩いていくのは苦にならなかった。川沿いに緑地があるから、まっすぐ歩いていてもずっと同じ景色っていうわけじゃなくて、エリアごとに休憩している人がいたり、遊んでいる人がいたり、人の動きがいろいろあって歩くのが面白かった。

(福井)距離的にはすごく近いわけではないけど、誰かがくつろいでいる姿が見えたりとか、いろんな景色が見える中で歩いているからこそ、気づいたら目的地に着いていたみたいな感じになるのかな。

(小野寺)観光としての歩きじゃないけど、都市を学んでいるからこそ、こういう歩き方もおすすめかもね。

さっぽろテレビ塔からみた大通公園(北海道札幌市)

公共交通が発達している博多駅(福岡県福岡市)

渋谷について

(福井)渋谷で聞いてみたいことがあるんだけど。センター街とか雑多な感じのところはいろんなものが集積しているみたいな面白さはあるけど、開発が行われている駅周辺とかの界隈性ってどういうところに感じてる?

(倉田)下北沢は高低差があまりないから、中小規模の建物をつなげることはできると思うんだけど、渋谷はもともと高低差があるから、開発を行わないとつなげることができないのかなって思ってる。再開発があるからこそ、上手く高低差を使ってパブリックスペースをつくっていると思っていて、再開発が中心となって広がって行くことで、そこに中小規模の建物が現れているという感じが渋谷の良さなのかな。

(福井)渋谷が結節点として強化されることで、渋谷から歩いてアクセスできるような周辺にも波及効果があるみたいなこと?

(倉田)そうそう。

(飛田)渋谷の開発って、割と道路的な扱いを開発の中に入れてるところが多いと思ってる。パルコとか、ミヤシタパークとか、通行部分を全部繋げて、回遊性を持たせることで界隈性を持たせるみたいな考え方は特徴的かなって思う。

渋谷PARCO(東京都渋谷区)

・まとめ

(倉田)みんなまちの変化を楽しめるってキーワードが出てたね。
エリアとしての移動が、渋谷とかシモキタとかなのかなって思いつつ、札幌とか福岡は広域的なつながりやすさとか、移動しやすさとかそういうのなのかな。

(飛田)渋谷は近くの代官山とかにも歩いて行けるし、盛岡も結構歩いていろいろな場所に行けるからそういうところはあるかもしれない。

(福井)移動する中で見える変化とか、ずっとその地域にいるからこそ、継続的に行くからこそ見える変化みたいなのが見えると面白いよね。

(小野寺)開発とかハード面でまちが変わっていく年代的な話とか、エリア的な話もあるし、アクティビティみたいなところで歩いてる中での人の動きとか出会いとかっていう話もあって、この2つの視点が共通してあることなのかな。

(福井)どこかのお店に入ってみるとか、移動する中でお店に入って留まるからこそ、そこでおすすめを聞けたり、予期せぬ出会いとか、人とのコミュニケーションがあるのもすごく面白い点だと思うんだけど、どう?
都内にいると、お店に入ってしゃべったりとか、あまりないんじゃないかな。移動する中での面白さを探すこともいいけど、ちゃんととどまる面白さもみんなに感じてほしい。

(小野寺)確かにそうだね。

(福井)いろんな人がいて面白いよ(笑)

(小野寺)移動している時は、誰かとしゃべるって感じよりかは、自分が見て楽しむっていう感じだけど、目的地やふらっとよってみた場所で過ごす中で、店員さんとか、まちに住んでいる人とかと話してみると、そのまちならではの出会いができるから、滞在した先での出会いは魅力的だね。私も旅先で現地の人とか、同じく旅行で来た人とか、人と話すことでそのまちについてもっと知りたいって、旅をしてて思うかな。

(福井)まとめに、M1がおすすめする都市の共通点を探してみると、 M1は歩く中での景観的な移り変わりという変化や、建築の更新や空間の整備などの経年での移り変わりという変化を実際に訪れることで楽しめる都市やエリアがおすすめしたい都市だと感じている。さらに、マガジンを読んでいる人におすすめとしては、ただ移動する中での移り変わりの変化だけを見るんじゃなくて、訪れた場所で留まってみることで、目に見えるものだけではない、人との関わりの中でまちの人たちの雰囲気や、コミュニティの雰囲気とかを感じてほしい。

                 ”変化に加えて、滞在する楽しみを”


おわりに

 M1によるおすすめの都市紹介はいかがだったでしょうか。
 私たち都市計画研究室(泉山ゼミ)では、様々な都市についてゼミ生同士で情報を共有し合い、都市について知識と理解を深めています。今回のマガジンでは日頃、都市について研究を行っているM1のみなさんの視点から都市の楽しみ方を伺うことができました。
 今後、旅行やまち歩きなど都市を楽しむ際の参考となれば嬉しいです。

                                  文責:阿部真実、本田薫子

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